2026/08/27

MacBook Pro 13inch(A1989) 電源が入らない|1.8Vラインのショート特定で復旧

電源ボタンを押しても画面が点かない、充電ケーブルをつないでも反応がない。「電源が入らない」というご相談は、バッテリー切れなのか、充電系統の故障なのか、あるいは基板側の深刻な故障なのか、見た目だけでは判断がつきにくいトラブルのひとつです。今回は、お預かりしたMacBook Pro 13inch(A1989)が突然無反応になり、充電しても改善しなかった案件を、当店で診断・復旧させた事例をご紹介します。切り分けの根拠となった測定データも含めて公開します。

症状・お預かり時の状態

機種MacBook Pro 13inch(A1989)
症状電源不良(電源ボタン・充電ケーブル接続とも無反応)
経緯気づいたときにはすでに何の反応もなく、充電ケーブルをつないでも状態は変わらなかった

外装に目立った破損は見られず、落下・水没・分解歴のお申告もない状態でのお預かりでした。ある日突然、電源ボタン・キーボード操作のいずれにも反応がなくなり、付属の充電ケーブルを接続しても充電ランプ等の反応が一切ない状態です。バッテリー完全放電による無反応とも見分けがつきにくいため、まずは電源回路の状態を客観的に確認するところから診断を始めています。

初期診断:まず何を測るか

電源が入らない症状では、まずバッテリーが完全放電しているだけの可能性を切り分ける必要があります。今回はUSB Type-Cの電圧・電流を表示できる測定治具を本体に接続し、通電時の挙動を確認しました。正常な状態であればUSB Power Deliveryのネゴシエーションが進み、電圧は段階的に20V前後まで上昇します。しかし本機では電圧が4.9V程度で頭打ちとなり、電流も0.16A前後からほとんど上昇しない挙動が確認され、正常なネゴシエーションが完了していないことが分かりました。この時点で、バッテリー単体の問題ではなく、本体側の電源回路に異常があると判断しています。

原因の特定プロセス

電圧・電流のいずれも正常な水準まで上昇しないという挙動から、電源系統のどこかで異常(ショートなど)が発生し、通常の起動・充電シーケンスまで進めていない可能性を疑い、以下の手順で切り分けを行いました。

  1. ロジックボードを本体から取り外し、外部の電源装置から直接通電できる状態にする
  2. 電源系統を回路図上でブロックごとに分離し、各系統に順番に通電しながら電流の異常がどのブロックで発生しているかを確認する
  3. 異常な電流上昇が確認されたブロックについて、該当ラインの導通・抵抗値を周辺部品ごとにチェックする
  4. 消去法で部品を絞り込み、1.8Vラインの該当箇所でのショートと特定する

「電源が入らない=バッテリー交換で様子を見る」という判断がされがちですが、充電器やケーブルを替えても症状が変わらない場合は、バッテリーではなく基板側の電源回路を疑う必要があります。

処置内容

特定した1.8Vライン上のショート箇所について、該当部品を交換する処置を行いました。

  1. ショートの原因となっていた部品を取り外し、同等品に交換
  2. 交換後、再度導通チェックを行い1.8Vラインの異常な低抵抗が解消されたことを確認

結果・動作確認項目

処置後、外部電源からの通電でAppleロゴが表示され、キーボードのバックライト点灯・トラックパッドの反応・ログイン画面(ロック画面)までの表示を確認しました。一方で、パスコードのお申し出がなく画面ロックを解除できなかったため、ログイン後のOS動作・Wi-Fi・周辺機器・バッテリー充放電までは確認できておらず、今回は電源投入まわりの最低限の動作確認のみで、作業日数2日にて返却しております。

エンドユーザー様へそのままご報告いただける確認結果

  • 電源投入でAppleロゴが表示されることを確認(電源不良は解消)
  • キーボードのバックライト点灯・トラックパッドの反応を確認
  • ログイン画面(ロック画面)までの表示を確認
  • 充電時の電圧が正常範囲まで上昇することを再測定で確認
  • パスコード不明のため、ログイン後のOS動作・Wi-Fi・周辺機器・バッテリー充放電は未確認

修理会社様へのご提案

本件のように「電源がまったく入らない」「充電しても反応がない」という案件は、店頭では部品交換だけでは切り分けが難しく、対応をお断りせざるを得ないケースが多い症状のひとつです。パスコード不明でロック解除ができない個体でも、電源投入・起動確認までを実施したうえで、実施できた確認とできなかった確認を分けてご報告しますので、エンドユーザー様へそのままご説明いただけます。また、修理を前提とせず「原因だけ知りたい」という診断のみのご依頼にも対応しております。iPhone・Androidから今回のようなMacBook等のノートPCまで、機種ごとに外注先を分ける必要がなく、当店を窓口としてまとめてご依頼いただけます。

なお、部品の仮付け・導通確認など技術的に対応可能な切り分けは、あらかじめ実施いただいたうえでのご依頼をお願いしております。

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