2026/08/28

iPhone 15 Pro Max(US版)電源不良|VDD_MAINショートの基板診断で復旧

電源ボタンを押しても画面が反応しない「電源不良」は、見た目だけではバッテリー不良なのか基板の故障なのか判断がつきにくい症状です。とくにiPhone 15 Pro MaxのUS版は、日本版と内部の作りが微妙に異なり、分解の手間そのものが診断のハードルになりがちな端末でもあります。今回は、自然故障で電源が入らなくなったiPhone 15 Pro Max(US版)を、切り分けの根拠まで公開しながら復旧させた事例をご紹介します。

症状・お預かり時の状態

機種iPhone 15 Pro Max(US版
症状電源ボタンを長押ししても無反応。画面点灯・振動・発熱のいずれも見られず、充電しても反応に変化なし。
経緯使用中、特段の前触れなく電源が入らなくなった。落下・水没・分解歴なし(自然故障)。

外装に目立った損傷はなく、バッテリーコネクタ周辺にも水没を示すような変色や腐食は見られませんでした。使用中に前触れなく電源が落ち、以降は充電しても反応が変わらない状態でした。

初期診断:まず何を測るか

電源不良は、まずバッテリー自体の劣化や接触不良を疑うのが基本です。判断の入り口になるのは、バッテリーを外してコネクタへDC安定化電源を直接つなぎ、電流の入り方を確認する測定で、この段階では基板を取り外す必要はありません。今回は画面を開けた時点でこの通電テストが行え、電源投入直後から電流値が異常な水準で頭打ちになり、そこから上昇しない挙動を確認しました。バッテリー単体の劣化ではこの挙動は説明がつかないため、基板側の電源系統の故障と判断し、ここから基板を取り外す作業に進みました。

US版はここからが少し面倒で、バッテリーを剥がすだけでなくアンテナケーブルが基板へ直接ハンダ付けされている箇所があり、日本版のようにコネクタを外すだけでは基板を取り出せません。ケーブルを断線させないよう慎重に取り回すことに加え、今回はバッテリーを交換せずそのまま再利用する前提だったため、変形させないよう丁寧に取り外す必要がありました。通常のバッテリー交換であれば、外すバッテリー自体はもう使用しないので多少の変形は気にしませんが、今回はそこが異なり、通常の分解以上に神経を使う作業になりました。

原因の特定プロセス

電源が入らない症状は、バッテリー交換で改善する可能性もありますが、通電直後から電流が頭打ちになる挙動が見られる場合は、バッテリー側ではなく基板側の電源系統のショートを疑う必要があります。今回は以下の手順で切り分けを行いました。

  1. これまでの経験から、電源不良で頻度の高い系統に見当をつける
  2. テスターで抵抗値を確認しながら、ショートしているラインを絞り込む
  3. 通電した状態で発熱の出方を確認し、ショートしている箇所を特定
  4. 特定した箇所周辺の部品を導通チェックし、VDD_MAIN系統でのショートと確認

経験からの推測だけで絞り込みが難しいケースでは、電源系統を回路図上でブロックごとに遮断しながら再通電し、異常な系統を切り分ける方法をとることもありますが、今回はテスターと発熱の出方の確認で特定できました。VDD_MAIN系統のショートは、電源不良の症例のなかでもとくに頻度の高い故障パターンのひとつです。今回もこの系統内での短絡が原因でした。

処置内容

原因箇所を特定したのち、以下の手順で処置を行いました。

  1. 顕微鏡でVDD_MAIN系統周辺を確認しながら、該当部品を除去
  2. 除去後、基板パターンに損傷がないことを確認
  3. 交換部品を実装し、周辺の導通を再確認
  4. 仮組みの状態で通電テストを行い、異常電流が解消されたことを確認

結果・動作確認項目

ショート解消後、電源投入で正常に起動し、Appleロゴを経て通常通り設定画面まで進行することを確認しました。作業日数は受領から1日です。

  • 起動・OS動作
  • 各種設定画面の表示・操作
  • Wi-Fi・Bluetoothの接続
  • カメラ(前面・背面)の起動
  • バッテリーの充電・放電

上記はいずれも異常がなく、エンドユーザー様への報告にそのままご利用いただける内容です。

ご提案

iPhone 15 Pro MaxのUS版は、バッテリーの外し方やアンテナケーブルの取り回しなど、日本版とは細かい部分で作りが異なり、分解だけでも通常より手間がかかる端末です。とくにアンテナケーブルが基板へ直接ハンダ付けされている点は、慣れていないと断線や破損のリスクにもつながりやすく、US版・海外モデルというだけで対応を見送らざるを得ないケースもあるかもしれません。

VDD_MAIN系統のショートによる電源不良は、店頭でのパーツ交換だけでは対応が難しい代表的な症状のひとつです。想定される依頼シーンとしては、①バッテリー交換をしても改善せず電源が入らない案件、②US版・海外モデルなど分解の勝手が日本版と異なる機種の対応、が挙げられます。診断のみのご依頼にも対応しており、機種を問わずiPhoneからAndroid・iPad・ゲーム機・ノートPCまで基板修理のご相談をお受けしています。技術的に対応可能な切り分け(部品交換・仮付け等)は、あらかじめ実施いただいたうえでご依頼いただけますと、診断がよりスムーズに進みます。

修理のご相談や料金はホームページでご確認いただけます。お問い合わせは公式サイトの問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

「まずこの基板を見てもらえるか聞きたい」という段階でもかまいません。症状や基板の写真を添えて、LINEからそのままご相談いただけます。

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