落下させたあと、電源ボタンを長押ししても画面もバイブも反応しない――。画面割れがなく外観もきれいなのに一切反応がない端末は、店頭で「基板故障のため対応が難しい」と判断されやすい症状です。今回ご紹介するのは、落下の衝撃を受けた直後から無反応になったarrows Be(F-04K)を復旧させた事例です。原因は電源系の中枢であるPMIC(電源管理IC)で、取り外してみるとICチップ自体に割れが生じていました。どの順序で疑い、何を測って電源系の入口から出口までを切り分けたのかを公開します。
症状・お預かり時の状態
| 機種 | arrows Be(F-04K) |
|---|---|
| 症状 | 電源ボタンを長押ししても画面表示・バイブレーション・充電ランプなど一切の反応がない。充電器を接続しても無反応 |
| 経緯 | 落下による衝撃を受けた直後から、上記の状態になった |
外装には落下によるフレームの打痕がありましたが、画面のガラス割れや水没痕はありません。ただし外観の破損が軽微でも、落下の衝撃は基板上の部品に直接伝わることがあり、油断はできません。当店ではまず、電源系がどこまで生きているかの切り分けから着手します。

初期診断:まず何を測るか
無反応の端末で最初に確認するのは、バッテリーや充電経路といった端末外側の要因です。バッテリーの電圧を測定し、別の正常なバッテリーへ差し替えても症状が変わらないこと、充電器・ケーブルを替えても反応がないことを確認しました。
次に、バッテリーを外した状態でDC安定化電源から直接給電し、消費電流の挙動を観察します。正常な端末であれば、電源ボタンの操作に応じて起動シーケンスに沿った電流の立ち上がりが見られます。しかし本機は電流がほとんど流れず、起動シーケンスがまったく始まっていない状態でした。ショートによる過電流でもないため、電源系の中枢そのものが機能していないと判断し、PMIC(電源管理IC)周辺の測定へ進みます。
原因の特定プロセス
- バッテリー・充電器・ケーブルを正常品へ差し替えて再現性を確認し、端末外側の要因を排除
- DC安定化電源から給電し、消費電流がほぼ流れず起動シーケンスが始まらないことを確認。過電流ではないため単純な短絡故障ではないと判断
- PMICの入力側を測定し、バッテリーからの電源がICまで正常に届いていることを確認。入力は正常、出力側の各電圧が生成されていない状態を確認
- 周辺のコンデンサ・抵抗を個別に測定し、周辺部品側に短絡や断線がないことを確認。IC単体の異常と判断
- 顕微鏡下でPMICを取り外したところ、ICチップ自体に割れ(クラック)が生じていることを確認。落下の衝撃がICに伝わり、内部が破損したものと判断
落下後の無反応は「基板故障のため対応が難しい」と案内されがちな症状です。しかし電源系は、バッテリー→PMICの入力→PMICの各出力→SoCという順序で追っていけば、どこで途切れているかを1点まで絞り込めます。今回のように入力は正常で出力だけが生成されていない場合、原因はIC本体にあります。また、実装されたままでは判別できないICチップのクラックは、取り外して初めて確認できる故障です。

処置内容
- 顕微鏡下で割れたPMICを除去し、基板側のランド・パターンに損傷がないことを確認
- ランドを整形・清掃し、同型のPMICを準備して再ボール(はんだボールの植え直し)を実施
- PMICを再実装し、各端子の導通・抵抗値を測定して実装不良がないことを確認
- バッテリーを接続する前にDC安定化電源から給電し、各出力電圧が正常に生成され、起動シーケンスが進むことを確認したうえで実機テストへ移行

結果・動作確認項目
PMICの交換後、電源ボタンの長押しでメーカーロゴが表示され、そのままOSの起動まで進行することを確認しました。充電時の電流値・発熱にも異常はありません。作業日数は受領から〇日です。以下は、エンドユーザー様へそのままご報告いただける動作確認項目です。
- 電源投入からOS起動までの動作
- 充電の開始とバッテリー残量の上昇
- 画面表示・タッチ操作
- 各種ボタン
- スピーカー
- 前面・背面カメラ
- Wi-Fi・Bluetooth
- モバイル通信・SIM認識
- 指紋認証・各種センサー
いずれも異常なし。
修理店様へのご提案
落下後にまったく反応しなくなった端末は、画面やバッテリーの交換では改善せず、店頭での判断が難しい症状です。とくにarrows Beのような発売から年数が経った機種は、メーカー修理の受付が終了していたり、基板交換という選択肢自体がないケースもあります。
- 落下後に無反応となり、画面やバッテリーの交換でも改善しなかった案件
- メーカー修理の受付が終了している機種で、データを残したまま復旧させたい場合
- 他店で「基板故障のため対応が難しい」と案内されたものの、故障箇所をピンポイントで修理することで復旧できる可能性がある場合
こうした案件は、セカンドオピニオンとして一度当店にご相談ください。診断のみのご依頼にも対応しており、復旧不可と判断した場合も、その根拠をお客様へご説明いただけるレベルでご報告します。
Androidに限らず、iPhone・iPad・ゲーム機・ノートPCまで、基板修理の窓口を一本化したいというご要望にも対応可能です。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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