電源が入らない端末は、バッテリーを交換して改善すればそこで完了しますが、改善しなかった場合はその先が基板側の話になり、外注に出すか返却するかの判断を迫られます。今回は、自然故障で電源が入らなくなったGalaxy S4を、同業の修理会社様からお送りいただいて基板を診断した事例です。2013年頃の発売とかなり古い機種でしたが、結論から書くと、原因はPMIC自体のショートで、交換して起動するところまで復旧し、データも保持されたままお返しできました。
症状・お預かり時の状態
| 機種 | Galaxy S4 |
| 症状 | 電源が入らず、起動しない。 |
| 経緯 | 自然故障で、ご依頼元でのバッテリー交換でも改善しなかったための基板診断のご依頼 |
初期診断:まず何を測るか
- バッテリーのコネクタを外し、DC安定化電源をバッテリーコネクタに接続して、電流の入り方を確認します。この工程では基板を取り外す必要がなく、分解した状態のまま測定できます。正常な個体であれば、電源ボタンを操作するまでは電流がほとんど流れず、操作後は起動の過程に沿って電流が段階的に変化していきます。今回は、操作していない状態でもわずかな電流が流れ続けており、さらに電源ボタンを操作しても、本来電流が上がるべきところで上がりきらない挙動でした。どこかに漏電があり、起動の途中で止まっていると考えられる電流の入り方です。
- 正常な挙動からのずれが確認できたため、ここで基板を取り外し、テスターで抵抗値を確認していきます。やみくもに全体を当たるのではなく、症状と電流の入り方から経験上怪しい系統に見当をつけたうえで、そこから周辺へ範囲を広げていく進め方です。今回はPMIC系統にわずかな漏電を検出しました。ただしこの段階で分かるのは「その系統のどこかで漏れている」という範囲までで、PMIC自体なのか、同じ系統につながる周辺の部品なのかまでは確定できません。
- そこで、基板に通電した状態で熱探知機を使って発熱の出方を確認します。漏電がある箇所は、正常時には出ないはずのわずかな発熱を伴うことがあり、これが範囲を1点まで絞り込む手がかりになります。今回はPMICからわずかな発熱が確認でき、同じ系統につながる周辺の部品には同様の変化が見られなかったため、PMIC自体のショートと特定しました。
処置内容
- 原因と判断したPMICを基板から取り外します。取り外したあとは部品まわりを清掃し、基板側のパッドに損傷がないか、他の部品を巻き込んだ痕跡がないかを顕微鏡で確認します。この時点で改めて抵抗値を確認し、漏電がPMICの取り外しとともに解消していることを確かめておくと、原因の切り分けが正しかったかどうかをここで裏取りできます。
- 交換用のPMICを取り寄せました。今回はこの取り寄せに3日を要しました。
- 届いたPMICを基板に実装します。取り付け後は、まず通電せずに抵抗値を確認し漏電が出ていないことを見たうえで、再びDC安定化電源をバッテリーコネクタに接続し、電流の入り方が正常な挙動に戻っているかを確認しました。診断時に見られた、操作前から流れ続けるわずかな電流と、起動の過程で上がりきらない挙動はいずれも解消していました。
結果・動作確認項目
- ショート解消後、電源が入り、通常どおり起動することを確認
- 起動後の電流の入り方が正常な挙動に戻っていることを確認
- PMICのわずかな発熱が解消していることを確認
- 本体内のデータが保持されており、起動後に参照できる状態であることを確認
- 作業自体は1日、部品の取り寄せに3日
正直なところ、これだけ年数の経った機種だと、電源系統を直しきってもNANDの経年劣化でデータまでは戻らないことがあるため、部品を取り付けて電源を入れる瞬間までは内心不安がありました。無事にデータごと復旧できて、ほっとした案件です。
ご提案
発売から年数の経った端末では、PMICのような電源系統の故障そのものを解消できても、データが保存されているNAND自体が経年劣化していて読み出せない、というケースがまれにあります。今回のGalaxy S4も、電流の入り方から電源系統の故障であることは早い段階で見えていたものの、その先でデータまで戻せるかどうかは実際に起動させてみるまで分からない部分がありました。結果としては問題なく復旧できましたが、逆に、原因そのものは処置できたのにNANDの状態が理由でデータの取り出しに至らない個体も存在します。一見、電源が入らない時点でデータも諦めるしかないように見えて、実際には基板側の処置で戻ってくるケースもありますので、古い機種だからという理由だけで見切りをつける必要はないと考えています。想定される依頼シーンとしては、①発売から年数の経った機種で電源が入らず、データの取り出しまで求められているもの、②わずかな漏電や部品の発熱を伴う電源系統の故障、の2つが挙げられます。バッテリーや充電まわりなど、技術的に対応可能な切り分けをあらかじめ実施いただいたうえでご依頼いただけますと、こちらでの診断もスムーズに進みます。診断のみのご依頼にも対応しており、当店ではiPhoneやAndroidのスマートフォンから、iPad・タブレット、Switch・PS5などのゲーム機、ノートPCまで幅広い機種の基板修理に対応しております。窓口を1社にまとめていただくことも可能です。
修理のご相談や料金はホームページでご確認いただけます。お問い合わせは公式サイトの問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
