電源ボタンを押すと青いランプは点く。充電ケーブルを挿せば充電ランプも反応する。それなのに画面は真っ暗なままで、いつまで待っても起動しない。ランプが点くぶん電源まわりは動いているようにも見えて、かえって原因の見当がつきにくい症状です。今回お預かりしたNewニンテンドー2DS LLも、初期の確認では決定的な異常が見つからず、最終的に消去法でCPU回路にたどり着きました。何を確認して、どう絞り込んでいったのかを公開します。
症状・お預かり時の状態
| 機種 | Newニンテンドー2DS LL |
| 症状 | 電源ボタンを押すと青いランプは点くが、画面が表示されず起動しない。 |
| 経緯 | 落下や水没の心当たりはなく、気づいたら症状が出ていたお預かり |
外装に目立った破損はなく、内部にも水濡れの痕跡は見当たりませんでした。充電ケーブルを挿せば充電ランプが点くため、充電まわりの回路は動いています。電源ボタンに対して青いランプが応答する点も含めて、「まったく無反応」の個体とは様子が違います。動いている部分が残っている分、どこまで進んでどこで止まっているのかを先に見極める必要がありました。
初期診断:まず何を測るか
- バッテリーのコネクタを外し、DC安定化電源をつないで通電したときの電流の動きを確認する。
- 電源系統にショートがないか、抵抗値を見ながら確認する。
- 充電ランプが反応することを手がかりに、充電まわりの回路の動作を確認する。
- 画面や各コネクタの接続に、表示を妨げる異常が出ていないかを確認する。
ランプが点くと電源まわりは無事のように見えますが、ランプが点灯するのは電源が入りはじめているというだけで、その先の起動まで進めているかどうかは別の話です。逆に、画面が映らないことから表示側の不具合に見えることもありますが、表示側を触っても症状が変わらないケースもあります。通電しても、起動に向かって電流が伸びていくところまで進まない。それでいてショートも抵抗値の異常も見つからない、という状態でした。
原因の特定プロセス
ここで一つ、3DS系列を扱ううえで避けて通れない事情があります。iPhoneやNintendo Switchであれば、メーカー非公式ながらサードパーティー製の回路図や有志が公開している資料が手に入りますが、3DS系列にはそれが一切存在しません。系統をたどって理詰めで追い込むという進め方ができないため、目に見える異常が出ていない個体では、確認できるところを一つずつ潰していく形になります。
- 電源系統にショートや抵抗値の異常がないことを確認し、候補から外す。
- 充電ランプが反応することから、充電まわりの回路は動いていると判断する。
- 画面や各コネクタまわりに、表示を妨げる異常がないことを確認する。
- 目に見える異常が残らなかったため、CPU回路を候補としてCPUの作業に進む。
正直に書くと、この時点で確証があったわけではありません。CPUの取り外しと再実装は、失敗すれば基板そのものを失いかねない作業です。それでもここに進めたのは、ここ最近DS系でCPUまわりの作業が続いていて、この機種の基板の熱の入り方や外し方に手応えが出てきていたからでした。DS系は部品交換で完結する故障が多い印象を持たれやすい機種ですが、他の機種と同じようにCPU関連が原因になることは実際にあります。これは当店にとっても、数をこなす中で分かってきたことです。
処置内容
- 基板を取り出し、顕微鏡でCPUを取り外す。
- 基板側とCPU側に残った古いはんだを除去し、パターンに損傷がないことを確認する。
- ステンシルを使ってCPUにはんだボールを植え直す(リボール)。
- 位置を合わせて再実装し、通電して起動するところまで確認する。
この工程で気を遣うのは熱の掛け方です。熱の掛けすぎはCPUそのものを傷める原因になるため、温度と時間を見ながら少しずつ進めました。ボールの大きさもそろえておかないと、接合が浅い箇所と潰れる箇所が混在して、同じ症状が残ることになります。
結果・動作確認項目
再実装後に通電したところ、画面が表示され、そのまま起動しました。消去法で進めた作業だったので、画面が点いたときは正直ほっとしました。結果としてCPU回路の不良が原因だったことになり、症状の見え方からは想像しにくい落としどころでした。
作業日数はお預かりから3日です。うち大半は、CPUにたどり着くまでの調査に費やしています。基板の作業そのものより、どこを疑うかを決めるまでに時間がかかるタイプの案件でした。
復旧後の動作確認項目は以下の通りです(※動作確認の範囲は仮の記載です。実際に確認した項目に合わせて差し替えます)。
- 電源投入からホーム画面までの起動(複数回テスト)。
- 上下画面の表示。
- タッチパネルの反応。
- 各ボタン・スライドパッドの入力。
- 充電および電源まわりの動作。
ご提案
ランプは点くのに起動しない、という症状は、電源がまったく入らない個体より切り分けに手間がかかります。動いている部分が残っているぶん、どこまで進んでどこで止まっているのかを一つずつ確認していく必要があり、3DS系列は参照できる回路図が存在しないため、なおさら消去法の比重が大きくなります。想定される依頼シーンとしては、①電源ランプや充電ランプは反応するのに起動まで進まない案件、②目に見える破損も水没の痕跡もなく、どこから手を付けるか決めきれない案件、の2つが挙げられます。技術的に対応可能な切り分けをあらかじめ実施いただいたうえでご依頼いただけますと、こちらでの診断もスムーズに進みます。診断のみのご依頼にも対応しており、当店ではiPhoneやAndroidのスマートフォンから、iPad・タブレット、Switch・PS5などのゲーム機、ノートPCまで幅広い機種の基板修理に対応しております。窓口を1社にまとめていただくことも可能です。
修理のご相談や料金はホームページでご確認いただけます。お問い合わせは公式サイトの問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
